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寺岡 有殿; 吉越 章隆; 盛谷 浩右
Atomic Collision Research in Japan, No.29, p.68 - 70, 2003/00
Si(001)表面の酸素分子による酸化反応には酸化膜の形成とSiO分子の脱離の二つの反応様式がある。われわれは酸素分子の並進運動エネルギーを変化させることによって、二つの反応様式を選択できることを見いだした。それに関する2002年の研究について報告する。
寺岡 有殿; 吉越 章隆
Atomic Collision Research in Japan, No.28, p.97 - 99, 2002/00
入射分子の並進運動エネルギーは表面反応の誘起にとって重要な因子である。われわれは超音速シード分子線技術と高エネルギー分解能光電子分光法をシリコンの初期酸化反応の解析に適用した。われわれは水吸着Si(001)表面では飽和吸着酸素量が酸素分子の並進運動エネルギーに依存して変化することを既に見出している。二つのポテンシャルエネルギー障壁が第一原理計算結果に対応して確認されている。清浄Si(001)表面で如何なる依存性を示すのかを確認する必要がある。そこで清浄Si(001)表面上での酸素分子の解離吸着の並進運動エネルギー依存性がSi-2pとO-1sに対する光電子分光を用いて調べられ、入射エネルギーがどのように極薄酸化膜の形成に影響を与えるかが明らかにされた。
吉越 章隆; 寺岡 有殿
Atomic Collision Research in Japan, No.28, p.105 - 107, 2002/00
超音速Oビームによって並進運動エネルギーを3.0eVにすると、水が解離吸着したSi(001)表面に、酸素の解離吸着が形成される。各酸化状態の時間発展を、高分解能放射光光電子分光法によるその場観察によって明らかにした。並進運動エネルギーが3.0eVの場合、第2層のバックボンドまで酸化がランダムに進むことが明らかとなった。酸化状態の時間変化から、酸化初期においてはSiが存在しないことが明らかとなった。これは、最表面のダイマーが4つの酸素原子と結合しないことを意味する。つまり、並進運動エネルギーによってダイレクトに、Si(001)表面のサブサーフェイスのSi原子のバックボンドまで酸素分子の解離吸着が起きることを明らかにした。
森林 健悟; Zhidkov, A. J.*; 佐々木 明; 周藤 佳子; 鈴木 慎悟*
Atomic Collision Research in Japan, No.27, p.1 - 3, 2001/00
短パルス高強度レーザーを数nmの大きさの巨大クラスターに照射することにより高温高密度電子状態を生成することが予測されている。この電子の衝突電離により内殻励起状態を形成し、X線を発生する。特に、クリプトンやゼノンのような高い電子番号の原子のクラスターの場合は、短波長X線が発生し、短波長X線源やX線レーザー源として注目されている。ここでは高温高密度状態でのゼノンイオンの多価イオン及び、内殻励起状態の生成過程に関して考察する。電子温度を数keV,電子密度を10~10/cmとする。考慮した原子過程としては電子衝突励起・電離,自動イオン化,輻射遷移である。この条件のもとでニッケル様ゼノンイオンを初期状態とし、電子衝突で電離し、数100fs後の内殻励起状態などのカルシウム様ゼノンイオンのポピュレーションを計算した。ポピュレーションの密度,温度依存性を調べた。ポピュレーションは密度と比例して増加するが、10cmのとき約100fsで飽和すること、また、温度とともに増加するが、10keVを超えると温度依存性がなくなることがわかった。内殻(1s,2s,2p,3s,3p)電離過程を含む場合と含まない(3d電子だけが電離する)場合を計算した結果、前者のポピュレーションの方が三桁程度大きくなり、高温高密度電子状態では内殻電離過程が多価イオン生成に重要であることを発見した。
吉越 章隆; 寺岡 有殿
Atomic Collision Research in Japan, No.27, p.80 - 82, 2001/00
酸素分子の並進エネルギーを2.9eVに制御した状態でSi(001)-21表面初期酸化状態をSPring-8の軟X線ビームライン(BL23SU)にて実時間光電子分光測定により明らかにした。初期(約35L以下)では、Si酸化状態は観察されず、Si,Si及びSiの急激な増加が観察された。その後、Siが観察されはじめ徐々に増加した。一方、Si,Si及びSiは、減少し、特にSiが大きく減少した。この結果、初期の酸素ドーズ量では表面ダイマーSi原子は4個の酸素原子に囲まれにくいこと、Siが主にSiから変化したものであることが明らかになった。また、膜厚は0.57nmであった。本研究は、Si(001)表面と酸素分子の反応ダイナミクスとして興味深いばかりでなく、熱反応によらない極薄酸化膜形成技術として、ナノテクノロジー技術の分野でも意義が大きいと考える。
寺岡 有殿; 吉越 章隆
Atomic Collision Research in Japan, No.27, p.77 - 79, 2001/00
本報告では昨年から今年にかけて行ったO分子の並進運動エネルギーで誘起されるSi(001)表面の初期酸化反応をシンクロトロン放射光を用いた光電子分光法で解析した結果の一部を述べる。清浄表面に残留HO分子が解離吸着した部分酸化Si(001)表面はO分子によってなかなか酸化されないこと。並進運動エネルギーが1.0eV以上でダイマーSiのバックボンドにO原子が入ること。さらに2.6eV以上ではサブサーフェイスのバックボンドにO原子が入ることを見いだした。Si-2pの光電子分光スペクトルには1eV以下ではおもにSiまでに酸化が止まること、1eV以上でSi,Siまで酸化が進行すること、2.6eV以上ではSiが顕著になることが示され、第1原理計算とほぼ整合する結果が得られた。
森林 健悟; 佐々木 明; Zhidkov, A. G.; 上島 豊; 周藤 佳子*; 香川 貴司*
Atomic Collision Research in Japan, No. 26, p.111 - 113, 2000/00
最近の高強度レーザーの発展に伴い、高輝度X線、高速電子、多価イオンなどの新しい励起源が利用できるようになりつつある。これらが固体や蒸気と相互作用すると内殻励起状態や中空原子を生成し、それからX線が発生する。今回は、このX線発生の原子過程とそれを用いた応用に関して議論する。高輝度X線源の場合は、マグネシウム蒸気を標的として場合の内殻電離型、中空原子型X線レーザーの実験系を提案した。高速電子源の場合は、内殻励起状態と中空原子のポピュレーションとレーザー強度との関係で計算した。多価イオン源の場合は、X線発生の原子過程が超高速(1fs程度)で起こること、及び、X線への変換効率は約0.03で高効率であることを明らかにした。10Jのレーザーを用いたとき発生するX線の個数は約10個と見積もられた。これはX線源として十分に機能する。
寺岡 有殿; 吉越 章隆; 佐野 睦*
Atomic Collision Research in Japan, No. 26, p.114 - 116, 2000/00
原研軟X線ビームラインBL23SUに設置した表面反応分析装置を用いてSi(001)表面のO分子による酸化の初期過程を研究している。特にO分子の並進運動エネルギーがSi表面の酸化状態に与える影響を調べるために、O分子の場合に3eVまでの運動エネルギーを与えることができる超音速分子線技術を用いて実験を行った。その結果、Si(001)表面に解離吸着するO分子の飽和吸着量が運動エネルギーに依存して増加すること、2つのしきい値が存在することを見いだした。また、表面温度が高い場合にはSiO分子が熱脱離するが、その脱離速度にもO分子の運動エネルギーが効果的であることを見いだした。これらの結果をまとめて年報として報告する。
市原 晃; 岩本 修; 横山 啓一
Atomic Collision Research in Japan, No.25, p.28 - 29, 1999/11
ガスダイバータの開発上重要な、Hと振動励起状態にあるH分子との衝突で生じるイオンの生成断面積を、理論的に計算した。計算手法はdiatomics-in-molecules (DIM) モデルポテンシャル上でのtrajectory-surface-hopping (TSH) 法を用い、重心衝突エネルギーが1.0から20.0eVの範囲内で断面積を計算した。そして計算結果から、H+H衝突においてHの初期振動状態の量子数vが0から5までは、vの上昇に伴って電荷交換反応によるHイオンの生成が急激に増加することを見いだした。また、v=8以上ではvの上昇とともに解離反応の増加が顕著になり、v=13以上では解離反応が主反応となることを確認した。
家村 一彰*; 鈴木 洋*; 大谷 俊介*; 武田 淳一*; 高柳 俊暢*; 脇谷 一義*; 関口 雅行*; 金井 保之*; 北澤 真一; Tong, X. M.*; et al.
Atomic Collision Research in Japan, No.25, p.42 - 43, 1999/11
われわれは、Heとアルカリ土類金属(Mg,Ca,Sr,Ba)の40keV低速衝突によって、2電子捕獲により生成したHe(2ln'l',3ln'l',4ln'l')2電子励起状態からの放出電子のスペクトルの実験結果を示す。Ba標的では、3lnl'が大きく、2lnl'は小さく、Mg標的では3lnl'が小さく2lnl'は大きく、Xe標的ではいずれのピークもほとんど現れなかった。この標的の違いによるピークの形は、標的原子の第1及び第2イオン化エネルギーの和に依存するものと考えられることがわかった。
関口 哲弘; 関口 広美*; 馬場 祐治
Atomic Collision Research in Japan, (25), p.82 - 83, 1999/00
シリコン(Si)半導体上における簡単な有機分子の表面化学反応はSiC薄膜生成などの応用面からの興味も相俟って、活発に行われている。本研究においては室温及び低温(93K)のSi基板上にアセトン((CH)CO)を吸着させた系について放射光の軟X線を励起光源として起こる解離反応を調べた。アセトンは励起エネルギーを変えることにより、分子中の(-CH3とC=0)の二種類の炭素原子を選択して内殻励起することができる。放射光照射により生じる脱離フラグメントイオンは四重極質量分析により直接検出した。単分子~約50分子吸着層についフラグメント収量の励起光エネルギー依存性を測定した。その結果、メチル基(CH)の炭素が内殻励起された場合のみ、CH(n=0-3)イオンが顕著に生成することが見いだされた。これはこの共鳴励起でC-C結合が特に顕著に切断されていることを示唆している。
寺岡 有殿; 吉越 章隆
Atomic Collision Research in Japan, No.25, p.97 - 98, 1999/00
表面反応ダイナミクスの研究では、化学吸着、表面での原子組み換え反応、脱離に対して入射分子の並進エネルギーや振動エネルギーの役割に興味が持たれている。また応用の見地からは、分子の運動エネルギーや光子のエネルギーは表面反応を制御するための新しい方法を開発するキーとなりうる。大きな運動エネルギーを持った分子の照射によって新しい化学吸着状態が形成される可能性がある。その分析に光電子分光法は有効である。それゆえ、SPring-8のBL23SUに表面反応ダイナミクス研究用のエンドステーションを設置すべく設計した。この実験装置では超音波分子線と電子エネルギー分析器を同時に使用して表面反応を実時間かつその場で観察するのが目的である。本投稿では本実験装置の設計の概要について報告する。
北澤 真一; 左高 正雄; 俵 博之*; 今井 誠*; 柴田 裕実*; 小牧 研一郎*; 東 俊行*; 川面 澄*; 金井 保之*
Atomic Collision Research in Japan, No.25, p.65 - 67, 1999/00
われわれは原研のタンデム加速器を用いて、高エネルギー(2MeV/u程度)のO(q=3,4,5)多価イオンと、炭素薄膜及び気体原子との衝突を、多価イオンから放出される電子を観測することにより、その機構を解明する研究を行っている。45MeV O+Heによって生成したO(1s2pnl)2電子励起状態を、低エネルギー領域の2電子移行過程120keV O+He→O(1s2pnl)と比較することにより解析した。また、36MeV O+Heによって1s2pnl nl=5p,5d,6d,7d状態が生成していることを、観測した。
関口 広美*; 関口 哲弘
Atomic Collision Research in Japan, No.24, p.116 - 117, 1998/11
SiCやSiOの薄膜合成に関連して、Si上の簡単な有機物分子の吸着構造や相互作用を調べる研究が数多く行われている。本研究は放射光の直線偏光を利用し、Si(100)2x1基板上の単分子吸着ギ酸の構造(結合角)を光吸収スペクトル(即ち、X線吸収端微細構造(NEXAFS))の偏光依存性を測定することにより調べた。NEXAFSに観測された4本の共鳴ピークは吸着ホルメート基(HCOO)の分子面外遷移()と3本の分子面内遷移()とに帰属された。双極子遷移の選択則からHCOO分子面は表面垂直(100方向)に対し212°傾いていると結論された。電子線回折実験による気相HCOOSiH分子の構造及び電子状態に関する情報を用い、吸着種のHCOO面の傾き角の起源を考察した。
関口 哲弘; 馬場 祐治
Atomic Collision Research in Japan, No.24, p.118 - 119, 1998/11
単分子~多分子吸着層表面について、脱離イオンのフラグメントパターンと脱離収量の励起光エネルギー依存性を測定し、電子励起に起因する表面解離反応における凝集効果を調べた。試料系としてはSi-F結合とSi-C結合を選択して励起でき、結合切断パターンがどう変わるかが興味深いSi(CH)Fを低温銅(111)基板上に凝縮させたものを用いた。単分子層で得られた結果の特徴はCH,Fなど軽いイオンが脱離すること、特にFは(Si-F)共鳴励起でのみ生じることである。多分子層ではSiX,(X=CH,F)や親イオンなど大きなフラグメントが生成し、共鳴励起よりもイオン化連続状態で増加した。低分子層では直接解離によるフラグメント生成のみが起こるためそれが主過程となる。一方、約3~5分子層以上では直接解離との競争過程として多価イオンを経由し複数の分子が関与するような間接的過程が主過程となると結論した。
北澤 真一; 市村 淳*; 武田 淳一*; 田辺 邦宏*; 町田 修一*; 高柳 俊暢*; 脇谷 一義*; 家村 彰*; F.Currel*; 大谷 俊介*; et al.
Atomic Collision Research in Japan, (24), p.70 - 72, 1998/00
我々は、理研や東大田無のECRイオン源を用いて低エネルギー(数10keV)のHe様多価イオンと、希ガスの衝突による2電子移行で生成するBe様イオンを放出電子分光によって測定してきた。理論計算によってそのスペクトル中のピークを同定し、電子の1重項状態、3重項状態を調べた。標的原子がHeのときは、1重項のみが現れ、Neのときは、3重項状態が主に現れ、Arのときには、1重項、3重項がともに現れる傾向があるということがわかった。
関口 哲弘; 関口 広美*; 田中 健一郎*
Atomic Collision Research in Japan, (23), p.84 - 85, 1997/00
電子励起による固体表面からのイオン種の脱離過程は、二次イオン質量分析(SIMS)及び電子刺激脱離(ESD)などの表面分析における重要かつ基礎的な過程である。本研究は選択励起されたSi(100)表面上の吸着ギ酸分子(DC00-)の分解及び脱離課程を光イオン・光イオン・コインシデンス分光法により調べた。C-Dコインシデンス収量の励起エネルギー依存性を詳細に測定し、敷居エネルギー等を決定した。C-Dは炭素内殻励起で生じ、酸素内殻励起ではほとんど増加を示さない。また二電子イオン化(shake-off)の断面積が一電子イオン化(normal)に比較して10%以下であるにもかかわらず、C-D収量はshake-off領域でnormal領域の2倍以上に増加した。このことから、脱離前駆体のイオン価数及び初期光励起における内殻ホールの位置がどの原子にあるか等がイオン脱離反応において重要であることが見い出された。
関口 広美*; 斉藤 則夫*; 鈴木 功*; 関口 哲弘
Atomic Collision Research in Japan, (23), p.80 - 81, 1997/00
凝集ギ酸メチル(DCOOCH)からの光刺激イオン脱離反応においていくつかの共鳴励起によりフラグメントイオン収量が増加することが観測されている。本研究はそれが表面反応に特有なものであるかどうかを確かめる目的で気相DCOOCH分子の光分解実験を行った。実験は電総研TERAS放射光施設おける軟X線ビームラインの飛行時間質量分析装置を用いて行った。表面反応ではC(C-D)(C-D)の励起でD収量が大きく増加したが、気相反応ではそれほど増加しなく、一方でC(CH)(CH)励起でD収量は減少した。気相では単分子反応が起こり中性化が起こらないため量子収率の変化は分子の分解による収量減少という形で表れる。それに対して、表面反応では中性化反応が起こるため量子収率の変化は表面分子の励起状態での反発性を反映して収量増加という形で表われる。上記の結果は光刺激イオン脱離法が表面敏感な分析手法であることを示している。
関口 広美*; 関口 哲弘
Atomic Collision Research in Japan, (23), p.82 - 83, 1997/00
光刺激イオン脱離収量の内殻吸収端微細構造(PSID-NEXAFS)スペクトルは特定の表面吸着種の空軌道の性質等の局所的情報を与えると期待されている。本研究においては、Si基板に単分子吸着したDCOO吸着種からの酸素内殻励起領域におけるPSID-NEXAFSを高分解能軟X線分光器を用いて測定した。結合エネルギーの化学シフトを利用して、二種類の酸素を選択して内殻励起し、それぞれの励起で起こる脱離反応収量の違いを調べた。ヒドロキシ基酸素(-O-)の励起によりCDOイオン収量が増加し、カルボニル基酸素(C=O)の励起ではCD収量が増加した。このことから選択励起された原子の近傍で優先的に結合切断及び脱離が起こることが明らかにされた。また、O収量はカルボニル基酸素の励起で増加した。この結果は、ヒドロキシ酸素が基板のSi原子に直接結合しているため励起エネルギーが基板に散逸したためと考えられる。
町田 修一*; 武田 淳一*; 高柳 俊暢*; 脇谷 一義*; 家村 一彰*; 大谷 俊介*; 鈴木 洋*; 北澤 真一; 関口 雅行*
Atomic Collision Research in Japan;Progress Report, (23), p.36 - 37, 1997/00
Cイオンとアルカリ土類原子(Mg,Ca)の衝突により放出される電子の分光が、東京大学原子核科学研究センターのHyper ECRイオン源を用いて行われている。この実験の主目的は衝突によって生じたCC1snln'l')イオンの2電子励起状態を同定することである。C+Ma,Ca,H衝突によって生じたCC1snln'l')の2電子励起状態からの放出電子スペクトルが得られて、それを基に考察がなされている。本報告は、この研究の現況報告である。